根管治療・歯根端手術

当院では精密な治療ができるように、実体顕微鏡を用いて根管治療、歯根端手術を行っています。1cm程度の歯が顕微鏡で20倍に拡大すると20cm程に大きくみえますので、より精密な治療ができます。保険の根管治療でも顕微鏡を使って治療していますので、赤字分野ですが、頑張っています。アメリカの1/10の治療費ですので大変です。100万円の車を10万円で、1000万円の家を100万円で売るのと同じくらいつらいという事です。


前歯の歯茎が腫れて痛みがあり、抜歯すると他院でいわれてしまいセカンドオピニオンを求めて当院を受診されました。 

レントゲン写真では根の先に卵の形をした黒い大きな影があります。

 虫歯が大きくなって神経が死んでしまい、根の先で、ばい菌と膿が溜まってしまった状態です。 

おそらくここまでの大きさになるのには、何年もかかったことでしょう。 

根に感染しているので歯を抜けば確実に治りますし、腫れも痛みもあるので前の先生が抜きましょうというのは仕方がない事だと思います。 

しかし、患者さんの残したいという希望が強かったので治療回数、治療期間がかかること、成功率が40〜50%しかないことをお話した上で、治療することにしました。私は歯を残すのが仕事ですので、できる限りのことはさせて頂きます。

治療開始3ヵ月後のレントゲン写真。 黒い影が少しずつグレーっぽくなってきました。 感染がとれて少しずつ骨ができてきたようです。 根に写っている白いものは水酸化カルシウムというお薬です。人体に影響がない弱いお薬しか使えませんので、根管治療は難しいです。感染している細菌は1/1000mmという、とても小さな微生物ですので、完全にやっつけるのが難しいです。

1年後のレントゲン写真。 黒い影はほとんど見分けがつかなくなりきれいに骨もできてきました。 根の中にしっかりと詰め物をして、あいている穴を白いレジンで蓋をして治療は終了です。 この間の治療回数は9回で期間は1年かかりました。 

2年後のレントゲン写真。 黒い影は完全に消えて、白線もみえてきました。
ここまできて初めて完治したといえます。 抜かなくてよかったですね 。           
今回はたまたま上手く治りましたが、残念ながら治せない症例もあります。 私たちは歯を残すのが仕事ですのでできる限り保存を試みますが残念ながらどこかに限界はあります。 歯を抜くといわれたけれども何とか残せないか相談したい方は一度ご連絡下さい。



治療前。

治療後。抜歯になってもおかしくない歯でも何とか残す事ができました。


歯根端手術(Apicoectomy)

外科的に歯茎を開いて、直接感染している根の先をきれいにする、歯根端手術という方法もあります。

適応症は

・通常の根管治療では治らなかった場合

・長い金属ポストが入っていて外せない場合

・自費のクラウンが入っているので、壊して外したくない場合

です。手術60分 抜糸5分と2回でできます。

左上2番(向かって右側)の歯に痛みを訴えて当院に来院されました。
前医では抜歯してインプラントにするしかないといわれたそうです。

レントゲンを撮ると確かに大きな根尖病巣(黒い影)があり、長いポストコアが入っています。
このコアを外して通常の根管治療をする事はできそうにありません。
根管治療も丁寧にされており歯根破折も疑われます。
ただ患者さんの強い希望で、ダメ元で歯根端手術を行ってみる事にしました。
それでダメなら抜歯してインプラントにしましょう。

切開して中を見てみると大きな骨吸収があり、根尖がすぐにみえてきました。
が、幸い明らかな歯根破折はみられませんでした。
感染している根尖3mmを切除し、逆根管充填して穴をしっかり封鎖します。

かなり細かい作業なので、顕微鏡で拡大しながら行っています。

縫合。
手術時間 45分

手術直後のレントゲン写真。
歯根先端を削除して逆根充した痕がわかります。

手術8ヶ月後。
症状もなく、経過良好です。
黒い影が奇麗になくなり、白線もしっかりでてきました。
幸い破折していなかったようです。

8ヶ月後の口腔内写真。
白い瘢痕治癒が残ってしまいますが、普段はみえないところなのでほとんど目立ちません。

今回はたまたまうまくいきましたが、割れているとどうにも治せません。
これで一安心でしょう。
このような状態で抜歯を宣告されて困っている方は一度ご相談ください。残せるかもしれません。